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センタープレスを読み解く

テキスト:チャーリー・ポーター

雨の日のイギリス王室で、アイロンをかけたパンツについた折り目がその発祥といわれているセンタープレス。現代ではフォーマルな装いを象徴するディテールです。偶然の誕生から現代における役割まで、ファッションジャーナリストのチャーリー・ポーターがセンタープレスの意義を考えます。

 

衣服における完璧さとは一体なんでしょう?もちろん、人生におけるあらゆる点同様、「完璧」な状態など存在しません。しかし、パンツの中央にくっきりと入ったセンタープレスの折り目は、完璧に限りなく近い状態です。この技法はイギリスの支配者階級が確立した「フォーマル」の演出方法ですが、今では身近なファッション要素となりました。センタープレスの入ったパンツを履くと、不思議と満足感が得られますよね。

ネット上で見つけた伝承によると、センタープレスはエドワード7世のズボンが雨で濡れてしまった際に生み出されたそうです。彼がその濡れたズボンをお抱えの仕立屋に渡したところ、仕立屋がアイロンをかけてズボンに折り目をつけたとか。エドワード7世がまだ皇太子だった1896年に起きたという別の説もあり、ズボンを受け取った農婦は、自分でも気づかないうちに紳士服のルーツを生みだしていたともいわれています。

要するにセンタープレスの誕生は、紳士服の伝統と信じられている数々の風変わりな装いと同様に、奇妙な偶然が重なった結果なのです。それを踏まえると、センタープレスがファッションに取り入れられるのはごく自然のことでしょう。

 

センタープレスは、きちんとした印象や、ときに真面目すぎるイメージさえも与えます。ワイドなパンツにセンタープレスを入れれば生地のボリュームを活かしたり抑えたりする役割を果たし、フレアパンツなら歩くときに裾の広がりを吸収してくれます。あらゆる装飾をそぎ落としたシンプルなパンツの場合、センタープレスがアクセントとなります。この技法はパンツ以外にも使用されており、多くのアバンギャルドデザイナーが身体の周りに驚異的なボリュームを作り出す斬新な作品を発表しています。

実をいうと、私はアイロンを持っていません。手持ちの服はアイロンなしで着られるものばかりです。しかしセンタープレスの入ったパンツが非常に好きで、ワードローブに大切に収納してあります。センタープレスの入ったパンツのフォーマルさはどこか偏屈なところがあり、私が持っているカジュアルな服とは対極的です。そして、それにふさわしい特別な扱いを受けます。センタープレス入りのパンツを洗濯機に放り込んだことは一度もありません。お抱えの仕立屋もアイロンをかけてくれる心優しい農婦もいませんが、私には腕のいいドライクリーニング店がついていますから。

 

(この記事は英語から翻訳されています)
チャーリー・ポーター(Charlie Porter)は、フィナンシャルタイムズ紙でメンズファッションのコラムを担当するロンドン在住のジャーナリスト。ファッション、アート、現代文化に深い見識を持ち、これまでにFantastic ManやGQ、ガーディアン紙、タイムズ紙の編集者を務めたほか、i-D、Vogue UK、The Faceなどにも記事を執筆。