デザイン・マイアミ/2017では、ロンドンを拠点とするアーティスト集団スタジオ・スワイン(Studio SWINE)とコラボレーション。今年のミラノサローネで初公開された、多感覚的刺激をもたらすインタラクティブなインスタレーション「New Spring」を発表します。
マイアミビーチの象徴的なアールデコ建築であるテンプル・ハウスで発表されたこのインスタレーションは、ミストで満たされた繊細な物質を「花」という不思議なかたちで表現。肌に触れると消えてしまうこの「花」は、特別な手袋を着用することで手にすることが可能です。これを生み出すのはテンプル・ハウスの象徴的な内装と共鳴する、インスタレーションの中心的存在である大きな木の形を連想させる彫刻作品です。
「New Spring」は再誕と再生の象徴であり、これはインスタレーションの全く新しい側面を明らかにするでしょう。テンプル・ハウスの明るい空間に建てられたこのインスタレーションは、マイアミの気まぐれな感覚を取り入れています。海辺のグラマラスなアールデコの街の魅力を引き出すユニークな遊び心です。
ーStudio SWINE
スタジオ スワイン(Super Wide Interdisciplinary New Explorersの略)は、日本人建築家の村上あずさ氏と英国人アーティストのアレクサンダー・グローブス氏によるコラボレーション。アート、デザイン、映像など、様々な分野に渡る作品で、グローバル化における地域の独自性や資源の未来を探求します。その作品は、ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館やニューヨーク近代美術館 、ヴェネツィア ビエンナーレなど、世界各地で展示されています。
インスタレーションと並んで、スタジオ・スワインはテンプル・ハウス2階にオープンする期間限定ショップのデザインも担当しました。「New Spring」からインスピレーションを得た彫刻的レールシステムを取り入れたこのショップでは、厳選されたレディース、メンズの商品が販売されています。
詳しい情報はこちらから。
「New Spring」
2017年12月6-10日
The Temple House
1415 Euclid Avenue
Miami Beach
#COSxStudioSwine
営業時間:
水曜日 11:00-19:00
木曜日 11:00-17:00
金、土曜日 11:00-19:00
日曜日 11:00-18:00
デザイン・マイアミ/での「New Spring」の登場を記念して、アーティスト兼キューレターであるメラニー・キング(Melanie King)は、芸術史、科学、メタファーのレンズを通して泡の分析とコンセプトを探求します。
ON BUBBLES
空に浮かぶシャボン玉を見つけて立ち止まったことはありますか?
ほんの一瞬の間に、表面には虹が見え、きらめく光と混同した風景の反射が現れます。そして突然、シャボン玉は壊れて消えてしまうのです。
物理的には地球上の気圧は完璧なバランスがとれており、シャボン玉は、周囲の水分がなくなり重力に負ける前のほんの数秒間存在することができます。木星のバンドを思い起こさせる渦巻く色は、シャボン玉の様々な厚さの表面に反射する光の相互作用によって生まれます。
その不安定な性質から、シャボン玉はなんの前触れもなく壊れる傾向があることで知られています。シャボン玉は、生命の一時的性質の象徴として17世紀のドラマチックなヴァニタス絵画でよく描かれました。実際に、黄金時代の偉大なオランダの芸術家たちは、シャボン玉の真の美しさは、その儚さの中にあると信じていました。果物、花、頭蓋骨、そしてシャボン玉のような腐敗しやすい物体の静止画を描くにあたり、アーティストの意図は、人生の短さを視聴者に思い起こさせることでした。これらの中世の作品は、「あなたはいつか死ぬ」と解釈されるラテン語の「memento mori」という影響力のある理論を体現しています。現代の聴衆にはこのアイデアが病的に映るかもしれませんが、シャボン玉はおそらくもっとロマンチックな「memento mori」のシンボルの一つです。本質的にその描写は、どのように時間を費やすかを考えることは重要だが、死を恐れるよりも人生が提供する貴重さと美しさを感謝することが大切だということを表現しています。
20世紀に入り、数多くの現代芸術家は、作品に泡を使用することによって存在の短さを祝うための視覚的メタファーとしました。1960年にはアーティストのデイビット・メダラ(David Medalla)が、時間の経過とともに変化、解体する泡のタワーを使用した、巨大な生物的彫刻である「Cloud Canyons」を制作しました。 同様にマイケル・ブレイジー(Michael Blazy)は、中世フランスの教会の壁を流れる泡で構成されたインスタレーション「Bouquet Final」を制作しました。これは、泡の一時性と教会の永久性の対照を詩的に表現しています。
スタジオ・スワインの「New Spring」は、泡の探求を通してこの歴史的伝統を継承します。通常のシャボン玉の体験とはかわって、来場者は手袋の着用によりミストで満たされた泡を手にすることが可能です。儚さのメタファーはデザイン全体を通して続きます。泡を放つ木は、その一時的な開花で有名な日本の桜にインスパイアされています。白い空間にぶら下がる惑星のような球体は、まるで別世界にいるかのような体験を生み出します。シャボン玉が壊れると、小さな銀河のような霧が放出されるのです。
ハッブルのような強力な新しい望遠鏡を使って、宇宙空間に存在する天体の泡が発見されています。例えばカシオペア座には、宇宙風に吹かれ生まれた、直径6光年以上のバブル星雲(NGC 7635)が存在します。現代の宇宙論者たちは、インフレーション理論を持って、宇宙は絶えず拡大しているバブルだと表現しています。「Why does the universe exist?(なぜ宇宙は存在するのか?)」において、哲学者のジム・ホルト(Jim Holt)は、我々の住む銀河系は宇宙に存在する数多くの銀河系のひとつに過ぎないことを示唆しています。彼の言葉で、「約140億年前に突然存在した宇宙は、既存の宇宙の時空から出現しました」。ここでホルトは、宇宙そのものが巨大な球体であり、バスタブにたつ泡のように現れたことを示唆しています。
何世紀もの間、アーティストは人生の存在をバブルの日常的現象と比較してきました。現在、高度な宇宙望遠鏡や宇宙論者・哲学者の先駆的なアイデアにより、より対等な比較をすることが可能となりました。私たちの存在意義を理解するために、両方の視点から、人生に価値を生み出し貴重な時間をユニークで楽しい経験に費やすことが読み取れます。
文章:メラニー・キング
メラニー・キング(Melanie King)はロンドンを拠点とするアーティスト兼キューレターであり、科学と天文学を専門としています。最近の論文では、アート、哲学、自然科学のメタファーとしての泡を探求しました。現在、ロイヤルカレッジオブアーツでファインアートの博士号の取得に向けて勉強中です。さらに、クリエイティブエイジェンシーsuper/collider, Lumen StudiosとLondon Alternative Photography Collectiveの共同ディレクターを務めています。
