ニュージーランドを拠点に活動するデザイナー、クラーク・バースリーは素材に焦点を当てたオブジェクトとスペースの制作をしています。
家具デザインへの高い関心と、さまざまな学問分野を探求することで知られている彼の作品は、デザインプロセスに遊び心のあるアプローチを取ります。簡素なスタジオスペースをオークランドに持ち、世界中の生産者とコラボレーションを行うクラークは、その美学をデザイン事務所「クラーク・バースリー・デザイン」でのプロジェクトに反映します。
素材選びで大切にしていることはなんですか?
可用性, 持続可能性、そしてキャラクターです。いくつかのプロジェクトで、関心の持った素材から始まり、相互作用や研究からアイデアを育てていく場合もありました。
素材の性質が作品の結果を変える場合があります。あなたの作品はこれを生かすようにデザインされているようですね。
私は、すべてのプロジェクトの中で素材を学ぶことを心がけています。素材と対立するのでなく、この素材はなにがしたいのか?と聞いてみるのです。それぞれの素材の予期せぬ性質とはなにか、そしてどのようにデザインレンズを適用して望ましい品質にすることができるかを考えます。
あなたのデザインは、近代的なデジタル製造と従来の技法を融合させるスタイルですね。どのようにこのふたつの要素の混在を達成するのですか?
デジタル製造は、私たちの生活と密接に関係する必要があると思います。伝統工芸は機械で作られた要素を人間味のあるものにする方法です。これを部品が組み立てられる過程や仕上げに適用したり、知識としてデジタル製造の過程に応用したりできます。
最近の作品のひとつ、「Arm」はクラシックな椅子のデザインに遊び心と独創性が導入されていますね。このプロジェクトのクリエイティブプロセスはどこから来ているのですか?
あまりにも真面目なデザインに飽き飽きしており、なにか面白いものを作りたかったのです。「Arm」は一目して椅子だと認識できますが、座るという機能は存在しません。これにより、このプロジェクトは迅速かつ楽しいものとなりました。美と比率に焦点を当てた、新しい生産プロセスが生まれたのです。人間工学は非常に重要な要素となっています。「Arm」がさまざまな製品にフィットし、肘掛け部分が座高に合うよう、幅広い種類の椅子の寸法・調査が行われました。
「アンチチェア」と呼ばれるこのデザインは、予想外の状況で機能性があらわになります。それ自体は一風変わったコンテンポラリーな作品ですが、他のオブジェクトと組み合わせることによって椅子として機能し、元々の用途を取り戻します。機能性はあなたの作品の中でどのような役割を果たしますか?
「Arm」の機能性は、思いがけないものとなっています。一般的に言えば、優れたデザイナーとは、機能性を損なうことなく世界について何かを表現したり反映したりする作品を生み出します。
私の仕事は、人々のためにアイデアを現実のものとすることです。私はアイデア主義であることをプライドとしており、予想されるすべてのニーズを満たすために元のアイデアを殺すことはしません。予期せぬニーズはどうするのですか?アイデアと機能性が巧みにバランスをとっていないことにより、世界は変凡な作品で溢れています。
プロジェクトを進めていく中で、専門家を招いて作業することが多いですね。このようなコラボレーションはよく行うのですか?
プロジェクトの開始時にメーカーと面倒な会話がない場合、それは真のコラボレーションとは呼べません!多くのメーカーは、手馴れたものから離れ、新しいものを製造することに乗り気ではありません。長年にわたり、オープンな心を持ち、異なるプロセスに前向きな専門家のネットワークを構築してきました。
プロジェクトのロケーションは、作業方法にどのように影響しますか?また、そのロケーション固有の課題に向き合うことはありますか?
ロケーション固有の作品は、常にその場所の観察から始まります。土地はアイデアで溢れているからです。私の作品の多くは、行動、環境、雰囲気を観察して生まれたアイデアに基づいています。ロケーションでの課題は通常、デザインの機会のある場所がどこであるかを見極めることです。
ロンドンとバースで数年を過ごしましたね。この経験はニュージーランドの見方を変えましたか?
ニュージーランドへの帰国は、英国で学んだことをこちらで生かすことを目的に、とても楽しみにしていました。新しい視点をもって戻ることは素晴らしいクリエイティブな体験でした。
あなたのデザインに対する美学と遊び心あるアプローチは、COS最新コレクションのインスピレーションとなっています。これを記念して、特別なウィンドウの制作を行いましたね。このプロジェクトについて教えてください。
このプロジェクトは、「Arm」プロジェクトで学んだ知識を活かして発展させる絶好の機会でした。デザインには、「Arm」の遊び心あるキャラクターと実質性を適用しました。しかし、部品の合理的なシステムから構成されているため、さまざまなロケーションやスペースでの分解・組み立てが可能です。考えとしては、「Arm」の漫画のような線をウィンドウ全体にまたがる絵にすることでした。
このインスタレーションは世界中の厳選されたストアで展示されます。これにより作品が何度もその目的を取り戻すため、持続可能なアプローチを必要とします。このようなアプローチはデザインの中で意識する側面ですか?
そうですね。一時的な作品をデザインするには、再利用できることを検討する必要があります。私の事務所では、持続可能性に対する優れたアプローチとして、作品の再利用と寿命の両方を考慮しています。寿命は耐久性や魅力を意味するかもしれません。
COSでは、クラシックなピースを再開発したり、奇妙で新しいコンセプトで発表したりします。この点で、我々は同様のアプローチがあるようです。
そうですね。考えてみれば、田舎、海外の国、近所や文化などを調査してあまり知られていなかったり見落とされている特性を現代の感性で再考することは私の大きな喜びです。
