COS x Le Kilt をご紹介します。
Samantha McCoach にキルトのすべてを教えてくれたのは、イタリア出身の祖母、 Lena でした。 腕の良い縫製職人としてエディンバラに渡った Lena は、すぐに街の名高いキルトメーカーに迎え入れられました。 彼女は工房で培った技術を家庭にも持ち帰り、毎朝6時にコーヒーの香りとともにサマンサを起こしては、縫い方や、忍耐の大切さ、糸をきちんと整理することの意味を教えてくれました。 祖母から受け継いだ教えを胸に、 Samantha はロンドンへと渡り、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートでファッションの修士課程を学ぶことになります。
祖母が作ってくれたキルトは、 Samantha にとって毎日の “ユニフォーム” のような存在になっていきました。彼女がそれを身に着けるたびに、周囲の女性たちから「それ、どこで手に入るの?」と声をかけられるようになったのです。 その反響を祖母レナに伝えるために電話をかけ、ふたりで話し合った末、2014年に Le Kilt(ル・キルト) が誕生しました。 最初のコレクション発表は、ロンドン・ファッションウィークの期間中、ソーホーの地下クラブで行われました。 あれから10年以上が経ち、Le Kilt は今や、世界中の熱心なファンにすぐに見分けられる、独自のスタイルを確立しています。 Le Kilt のプリーツの動きには力強さがあり、生地そのものには深い意味が込められています。 ブランドのシグネチャーであるバックルは、過去への敬意を表すと同時に、その裏側に流れるパンク精神をほのかに感じさせるのです。
Samantha が COS のインハウスデザイナーとしてキャリアの一章を過ごした後、Le Kilt とのコラボレーションはごく自然な流れでした。 彼女はこう語ります。 「COS の女性は、自分が誰であるかをしっかりと理解している。強く、地に足がついていて、自分らしさが明確。Le Kilt の価値観とも通じ合っていると感じました。キルトは伝統的なアイテムですが、同時に時代を超えた存在でもある。私たちの間には、共鳴し合う価値観があったんです。
COS x Le Kilt カプセルコレクション――2種類のキルトと1着のジャケットは、スコットランドの伝統的な職人技を日常のワードローブに落とし込んだラインナップです。
それぞれのアイテムは、精巧な技術と確かな意図をもって美しく仕立てられており、Le Kilt の象徴的なデザインコードと COS のシグネチャーであるテーラリングが見事に融合しています。フルレングスのキルトは、端をすっきりと仕上げ、フリンジをあえて排除。動いたときに現れる大胆なスリットが特徴です。ミディ丈のキルトには、イタリア製の高品質なバックルがあしらわれ、より力強い印象に。ジャケットは、前面にはベルトとバックルを効かせつつ、背面ではそれらを見せないミニマルな仕立てになっています。「クラフトマンシップって、すべてが表に出ているわけじゃない。それが面白いところなんです。」
ここで Samantha は、彼女にとっての「ヘリテージ(伝統)」の意味と、熟練した技を持つ人々が集まることで、いかに特別なものが生み出されるかについて語っています。
デザイン&クラフトマンシップ 「COSのインハウスアトリエ、パターンカッターやチームと密に仕事をするのが大好きでした。多くの手が関わって特別なものが生まれる瞬間は本当に刺激的です。私にとって、素材(布地)がいつも出発点です。COSには素晴らしいテーラリング生地が揃っていて、長年愛用してきたその生地を自分の作品で使えるのはとてもワクワクしました。COSのパンツを履くと強さと自信を感じるので、その感覚をLe Kilt に昇華させられるのは本当に楽しみです。私にとってキルトは、スカートを好む女性にとってのシャープなパンツと同じ存在であり、威厳を持っています。COSはテーラリングで知られているので、ジャケットを取り入れることは必然的でした。両者の言語(デザインコード)が対話を始めるような感覚です。」
スタイリング&アイデンティティ「ファッションは主に着る人自身のものであり、どう組み合わせるか、そしてその人のパーソナルスタイルが大切だと思っています。デザインは、その人のワードローブやアイデンティティを引き立てるものだと考えています。Le Kilt のアイテムは、自分らしく着こなして “自分だけのユニフォーム” にできるもので、まっさらなキャンバスのように自由に扱ってほしいんです。頭のてっぺんから足元まで統一したスタイルにしてもいいし、ヴィンテージのTシャツや借りたシャツなど、自分らしさを加えて崩してもいい。キルトはその人のアイデンティティを受け止めるものであって、押し付けるものではありません。」
ヘリテージと伝統の再定義「私はヘリテージを、現代的な視点で、そして誰もが共感できる現代の環境の中で捉えています。ヘリテージに対する固定観念にはとらわれたくありません。私はエディンバラで育ちましたが、周囲は石造りやコンクリートの街並みばかりで、とても都会的な環境でした。私にとってヘリテージは、流動的でグローバルなものであるべきだと思っています。ロングキルトのスリットには “反逆” の意味があります。静止していると伝統的に見えるけれど、動くと意外な表情や、時には色気さえも見せる。その矛盾が私は好きです——それがヘリテージを生き続けさせるのです。「キルトは何年もあなたのワードローブで生き続けるべきもの。それこそが本当のレガシーです。」
最近見た中で最も感銘を受けた展覧会は?レイヴン・ロウで開催された Peter Hujar の『Eyes Open in the Dark』です。
仕事をしていない時のリラックス方法は?友人に会うことです。
スマホで撮った最近の印象的な写真は?スコットランドのポートベロー・ビーチを姉妹や家族と一緒に歩いている写真です。
エディンバラを訪れる人への、トップ3の地元通オススメスポットは?バード、ヴァルヴォナ&クロッラ、そしてフルーツマーケット・ギャラリーです。